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 愛育病院における麻酔科の主な業務は、手術の際の麻酔と手術後の鎮痛、分娩の際の鎮痛としての硬膜外麻酔分娩です。当院は産婦人科と小児科が主体の病院ですから、担当する麻酔も帝王切開術、新生児から学童期の小児の手術や検査など、特殊な症例が多くを占めます。

 どの手術の麻酔にも共通する目標は、手術を安全に行えるようにすることです。麻酔科医は手術中、患者さんの血圧や呼吸が安定するよう麻酔の管理に努めています。また手術後の鎮痛として、硬膜外麻酔を積極的に導入しています(状況によっては、硬膜外麻酔を使用できない場合もあります)。硬膜外麻酔を使用できない場合は、それに代わる手段を講じます。

 手術をしたから痛いのは当たり前、ではありません。手術後の痛みをすべて取り除くことはできませんが、少しでも痛みの少ない術後を過ごしていただきたいと考えています。


麻酔科外来について

 2009年12月より麻酔科外来を開設しました。
 対象となる方は、すでに当院に受診中で硬膜外麻酔分娩を希望される妊婦さんや、手術前に麻酔科医の診察が必要な患者さんです。
 麻酔科外来受診をご希望の方は、担当の産婦人科医師へご相談ください。


すべての妊婦さんへ

【帝王切開術の麻酔について】
 妊娠中であれば、どなたでも帝王切開術となる可能性があります。事前に帝王切開術を予定している場合はきちんとご説明できますが、緊急手術となった場合、麻酔について落ち着いてご説明できない場合があります。ですから、現時点では順調な妊娠経過であっても万が一の可能性に備え、すべての妊婦さんにこの項目をお読みいただきたいと思います。
 帝王切開術は、全身麻酔、脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)、硬膜外麻酔、いずれの麻酔方法でも行うことができます(各麻酔方法の詳細はこちらをご覧下さい)。しかし、妊婦さんの全身麻酔は、一般の方よりも誤嚥性肺炎やその他のリスクが高いという事がわかっています。そのため多くの施設では、部分麻酔(脊椎麻酔、硬膜外麻酔)が選択されています。また、部分麻酔の中でも、効果が強力な脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)が主流です。

 しかしながら、帝王切開術の麻酔方法はその緊急度によって異なります。当院の帝王切開術における一般的な麻酔方法は下記の通りです。各麻酔方法の詳細はこの後に記載してありますので、妊娠中に目を通されることをお勧めします。
予定手術   脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)+ 硬膜外麻酔
または、脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)のみ
緊急手術 緊急度 低 脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)+ 硬膜外麻酔
または、脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)のみ
緊急度 中 脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)のみ
緊急度 高 全身麻酔のみ
   参考 *帝王切開手術の緊急度について*
      「緊急度 低」:緊急手術は必要だが、数時間は待てる
      「緊急度 中」:緊急手術を決断し、1時間以内の手術が必要
      「緊急度 高」:大至急、緊急手術が必要である(超緊急手術)


   <愛育病院 2009年 手術事例>
   

【誤嚥性肺炎について】
 誤嚥性肺炎というのは、胃の内容物が逆流し、誤って肺に入ってしまうためにおこる肺炎です。
 この肺炎は、命に関わる重篤な症状に発展する可能性があります。
 誤嚥性肺炎のリスクは胃の中を空にしておくと低くなることが知られているため、予定手術では手術前日から食事と飲み物を制限しています。少しでも緊急手術の可能性がある場合は、早めに食事と飲み物を制限する場合があります。


麻酔の種類

手術中の麻酔は大きく、全身麻酔と部分麻酔の2種類に分けられます。部分麻酔には脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)と硬膜外麻酔が含まれます。

麻酔の種類 説明 どんな手術に
全身麻酔  全身麻酔は麻酔薬を脳に作用させて意識をなくし、痛みの感覚をなくし、手術の妨げにならないように体を動かなくする方法です。
 これらの作用により、手術という刺激から患者さんを守り、円滑な手術が行えます。
 麻酔薬は点滴から使用する麻酔薬と、ガスの麻酔薬の2種類があります。
 どちらの麻酔薬を使用しても、麻酔中の患者さんはご自分で呼吸が上手に出来なくなります。そのため、呼吸を助けてあげられるよう、喉から気管にかけて呼吸の管を入れる必要があります(気管挿管)。この管を通じて、酸素と麻酔のガスを吸っていただくことで、呼吸と全身麻酔を維持します。
 また症例によっては、気管まで管をとおさず、口の中だけに入れる特殊な器具(ラリンゲルマスクなど)を用いることで、術後の負担を減らすことができます。そのため当院では、ほとんどの小児外科手術症例や婦人科手術症例でそうした器具(ラリンゲルマスクなど)を用いています。
全身麻酔は、小児外科手術や婦人科手術、ごく稀に帝王切開手術で行います。
部分麻酔 【脊椎麻酔】(脊髄くも膜下麻酔)】
 背骨の中には脊髄という神経の束が走っています。
 脊髄の表面を覆っている膜を硬膜といいます。脊髄と硬膜の間には、くも膜下腔というスペースがあります。くも膜下腔は髄液という液体で満たされていますが、そこに局所麻酔薬や鎮痛薬(麻薬など)を注射することで直接脊髄に作用させ、下半身に麻酔を効かせて手術が出来るようにします。これを脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)といいます。注射をする場所は、ちょうど腰のあたりの背骨です。脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)は、硬膜外麻酔と比べて麻酔の効果が強力であるのと、短時間で効果を得られるのが特徴です。ただし、手術後の鎮痛には使用できません。
 また、血液が固まりにくい場合(血小板が少ない、など)や背骨に異常がある場合は、脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)を行えません。
ほとんどの帝王切開手術ではこの脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)を行います。
【硬膜外麻酔】
 背骨の中には脊髄という神経の束が走っています、
 脊髄の表面を覆っている膜のことを硬膜といいます。硬膜と背骨の間が硬膜外腔というスペースです。
 硬膜外麻酔とは、この硬膜外腔という場所に細くてやわらかいチューブを挿入し、局所麻酔薬や鎮痛薬(麻薬など)を注入する方法です。薬は主に脊髄やその周辺の神経に作用します。脊髄は痛みを脳に伝える神経ですから、薬を全身に投与するよりも効果的に痛みを和らげます。脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)と比べて、効果を得るまでに時間がかかりますが、細いチューブから薬剤を持続的に使用することで、手術後の痛み止めとして使用できるという特徴があります。また、注入する局所麻酔薬の量や濃度を調節したり、注入する場所を選択したりすることによって、鎮痛作用の強さや麻酔の効く範囲を変えることも可能です。
 硬膜外麻酔もまた、血液が固まりにくい場合(血小板が少ない、血液を固まりにくくする薬剤を使用する、など)や背骨に異常がある場合は行えません。チューブを挿入するために少し太めの針を刺す必要がありますが、痛み止めをしてから刺しますのでそれほど痛みはありません。手術後は自動的に薬剤が体内に注入される器具を使用して、痛みをとります。
小児外科手術の一部や婦人科手術、多くの帝王切開手術でこの硬膜外麻酔を併用します。


硬膜外麻酔分娩について

 分娩の際に使用される鎮痛方法としては、当院では2通りの方法を提供しています。
 一つは硬膜外麻酔を用いた麻酔分娩、もう一つは鎮痛剤の注射によるものです。麻酔科医は硬膜外麻酔を用いた麻酔分娩を担当します。
 硬膜外麻酔による麻酔分娩は、麻酔によって子宮収縮の痛み(陣痛)を和らげるもので一般的には無痛分娩といわれています。使用する局所麻酔薬や鎮痛剤の内容によって鎮痛の程度を調整できます。(硬膜外麻酔の詳細については、【硬膜外麻酔】の項目をご覧ください。

 愛育病院の分娩方針の基本は、母児の安全を守りつつ、出来るだけ自然分娩をしていただくことです。麻酔分娩は分娩時の痛みを和らげ、母児ともに無理のないお産とするお手伝いをさせていただくものと考えています。
 
 より詳しい内容に関して 
帝王切開手術の麻酔や、硬膜外麻酔分娩(硬膜外無痛分娩)について、日本産科麻酔学会から患者さん向けに説明したものが出ています。絵による解説もあり、わかり易く説明されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
 (日本産科麻酔学会ホームページ


診療実績

麻酔件数(手術時)
平成21年1月から12月における麻酔総件数は791件でした。その内訳は、下記の通りです。

【症例別内訳】
      


【緊急度内訳】
       

硬膜外麻酔分娩件数
平成21年1月から12月における硬膜外麻酔分娩の件数は133件でした。

    硬膜外麻酔分娩件数  133件
    当院における総分娩件数       1735件


医師紹介

医師 役職 専門医
細川 幸希 (ほそかわ ゆき)  麻酔科医長  日本麻酔科学会 専門医 

 

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